飛騨高山の朝にぬくもりを運ぶパン屋「ハイジ」|素朴で優しい味を求めて

飛騨高山に根ざす手づくりパンの名店「ハイジ」

今から25年前、飛騨高山の豊かな自然と人々の暮らしに寄り添うようにして、ある夫婦が立ち上げた小さなパン屋があります。それが「ハイジ」です。創業当初は店舗を持たず、軽トラックによる移動販売を中心に営業を行っていました。早朝からパンを焼き、町内のスーパーやイベント会場、時には保育園や病院の前など、地元の人々の暮らしに寄り添う形でパンを届けてきました。その素朴でやさしい味わいは徐々に評判を呼び、いつしか「移動販売のハイジ」として地元では知られた存在となっていきました。

そんな「ハイジ」が大きな転機を迎えたのが、2023年4月のこと。長年続けてきた移動販売にいったん区切りをつけ、「やすがわ商店街」に念願の直営店舗を構え、新たな一歩を踏み出しました。これまで培ってきた味と信頼を、今度は「お店」というかたちで丁寧に届けていくという決断でした。

新たな拠点となった「やすがわ商店街」は、飛騨高山を訪れる観光客なら一度は足を運ぶといっても過言ではない、非常に重要な観光導線上に位置しています。宮川朝市から古い町並みへ向かう途中にあるこの商店街は、地元の人々と観光客が交差するにぎやかで温かな空間です。また、商店街には全体にアーケードが整備されており、雨の日や強い日差しの下でもゆっくりと散策が楽しめるのが魅力。天候に左右されず、のんびりと歩いてまわれる点でも、観光ルートに組み込みやすいエリアとして人気があります。

そんな商店街の一角にある「ハイジ」は、決して大きな店舗ではありませんが、どこか懐かしくて落ち着く雰囲気を持つパン屋です。看板や外装に派手さはないものの、ショーケースに並ぶ素朴なパンや、ふんわり香る焼きたての香り、そして「いらっしゃいませ」と優しく声をかけてくれる店主の姿が、訪れる人々の心をそっとほぐしてくれます。買い物だけでなく、ちょっと立ち寄ってほっと一息つきたくなるような、そんな居心地の良さがここにはあります。

観光地として名高い飛騨高山では、有名な老舗店や名物グルメに注目が集まりがちですが、「ハイジ」はまさにその対極にある存在。観光スポットの華やかさではなく、日々の生活の中に自然と溶け込み、地元の人たちに長年親しまれてきた「町のパン屋さん」です。観光客にとっては、この街の素顔、つまり“地元の日常”に触れることができる、とても貴重な場所ともいえるでしょう。商店街を歩く途中、ふと目に留まるその温かさが、旅の印象をより深く、豊かなものに変えてくれるはずです。

住所〒506-0842
岐阜県高山市下二之町77
電話番号0577-37-1121
営業時間10時00分~16時30分
※売り切れ次第終了
休業日木曜日、金曜日
店主と奥様 夫婦二人三脚で走り続けてきました!

朝3時から焼かれる、店主の“手しごと”のぬくもり

「ハイジ」の最大の魅力は、店主が毎朝3時に起きて一つひとつ丁寧に手づくりしているパンです。冷凍生地や工場製品に頼らず、その日の気温や湿度に合わせて発酵時間を調整し、地道に焼き上げる姿勢には、まさに職人の魂が宿っています。

パンの種類は、本格ハード系からお子さんやご年配の方に人気の柔らかいパンまで幅広くそろっています。見た目は素朴でも、一口食べると素材の味がしっかりと感じられ、「また食べたい」と思わせる力があります。

デニッシュ・クロワッサン
フランスパン
サンドイッチ類
クッキー
惣菜パン
菓子パン

飛騨の自然に寄り添う素材選び

「ハイジ」のパンは、地元・飛騨産の素材を積極的に取り入れているのも特徴です。たとえば、飛騨高原牛乳を使ったミルクパンは、コクがありながらも後味がすっきりしていて、小さな子どもにも大人気。その他、地元のたまごや無農薬の野菜を使用した惣菜パンも並びます。

「素材が良ければ、味は自然と決まる」と語る店主の言葉からは、派手な演出に頼らず、素材の力を信じていることがうかがえます。

観光客にもじわじわ人気。「朝ごはん」にぴったりの立ち寄りスポット

最近ではSNSなどを通じて観光客にも少しずつ知られるようになってきた「ハイジ」。特に「高山の朝はパンから始めたい」というリピーターの声も多く、近くの宿泊施設に泊まった観光客がチェックアウト前に立ち寄る姿も見られます。

高山は和のイメージが強い街ですが、こうしたパン屋の存在は「旅のなかの安心感」や「素の暮らし」に触れられる貴重な機会でもあります。観光で疲れた体に、素朴で優しい味わいが心地よく染み渡ります。

アクセス・営業時間・訪問のコツ

「ハイジ」は、高山市の中心部から徒歩約5分ほどの場所にあります。観光地である古い町並みや宮川朝市から少し離れた静かなエリアにあり、まさに「隠れた名店」と言える立地です。

営業時間は朝10時から売り切れ次第終了。定休日は不定休のため、事前にSNSなどで確認しておくと安心です。特に土日や観光シーズンには、開店直後から客足が途絶えず、人気商品は午前中に完売することも珍しくありません。

飛騨高山で「本当の朝」を体感する

旅行中、ついつい観光地の“有名スポット”に目を奪われがちですが、実はその土地の「本当の魅力」は、こうした地元密着型の店にこそ詰まっているのかもしれません。「ハイジ」で過ごす朝は、ただパンを買って食べるだけの時間ではなく、飛騨高山の“暮らし”の空気にそっと触れる体験そのものです。

派手ではなくても、人の温かさ、手間ひまを惜しまない仕事、土地に根ざした素材の力。そのすべてが詰まった「ハイジ」のパンは、旅の記憶にそっと残り続けるでしょう。

まとめ|旅の朝に、「ハイジ」で心も体も満たされて

飛騨高山を訪れた朝には、ぜひ「ハイジ」で1日を始めてみてください。手づくりのパンに込められたやさしさ、店主の人柄、飛騨の恵みが融合したその一つひとつは、ただの“パン”ではなく、心に沁みる“体験”そのものです。

旅の途中に、ほんの少しだけ早起きして。「ハイジ」のパンが、あなたの飛騨高山の思い出を、よりあたたかく、より深く彩ってくれることでしょう。

【コラム】パン屋「ハイジ」を旅のルートにどう組み込む?

「ハイジ」は飛騨高山の観光ルートにおいて、朝のスタート地点として理想的な場所です。例えば、「ハイジ」でパンとコーヒーをテイクアウトして、徒歩で5分ほどの場所にある「宮川朝市」へ向かうのもおすすめ。地元野菜や雑貨を見ながら、ゆっくりと散策できます。

また、「ハイジ」で購入したパンに限り、隣にある喫茶店「ツタヤ」に持ち込みができます。「ハイジ」でパンを買って、隣の喫茶店でコーヒーを飲みながらゆったりと味わうのもとてもおすすめです!

その後は、古い町並みへ足を延ばして高山の歴史や文化に触れるルートが王道。ハイジのパンが旅の始まりを、よりやさしく、あたたかいものにしてくれるはずです。

観光だけじゃない、地元の“毎日”を支えるパン屋

観光ガイドではなかなか紹介されない「日常の中の名店」こそ、本当の“その街らしさ”を知る鍵となります。「ハイジ」はまさにその象徴。平日、昼食にと立ち寄る会社員、子どものおやつにと買いに来るお母さん、そんな地域の暮らしに自然と溶け込んでいます。

「ハイジ」のパンには、観光客に“高山を感じてもらいたい”という店主の思いと、地元民の“いつもの味”という信頼が同時に詰まっており、それがこのパン屋の魅力を一層深いものにしています。

高山市を訪れたら立ち寄りたい“もう一つの目的地”に

飛騨牛や古い町並みなど、高山の定番観光地に加えて、「ハイジ」のようなパン屋を目的地に据えることで、旅の楽しみ方はより一層深まります。小さなパン屋ではありますが、そこで得られる“心の満足感”は決して小さくありません。

観光地の喧騒を離れ、素朴なパンと、やさしい時間に包まれる——そんな体験が、「飛騨高山」という旅をもっと特別なものに変えてくれるでしょう。

今後の展望と「ハイジ」からのメッセージ

「もっと多くの人に、うちのパンを食べて笑顔になってもらえたら嬉しい」——それが店主の口癖だそうです。これからも地元に根ざした姿勢を大切にしつつ、新たなメニュー開発にも意欲的。観光客からのリクエストや声も取り入れながら、少しずつ進化している「ハイジ」には、これからの高山の“日常と旅の交差点”としての役割が期待されます。

一度そのパンを味わえば、次に高山を訪れたときも「またあの味に会いたい」と思うはず。そんな“旅の記憶を宿すパン屋”が、「ハイジ」なのです。